ゲージとは何か
編み物を作る場合には、必ず「ゲージ」を取ります。「ゲージ」とは、「10cm角の編み地を編んだ時に、何目(横の目数)と何段(縦の段数)で構成されているかが表記されたもの」です。要するに編む際の糸と針で、1目・1段がどのような幅と高さになるかを表すものです。
1目・1段がどのような幅と高さになるか分からなければ、それぞれ横何目・縦何段編むべきなのかは分かりません。その指標となるのが「ゲージ」になります。毛糸を買うとラベルの裏側には必ず「ゲージ」は表示されています。ちなみにこの靴下を編む際に使っているコロポックルのラベルには、下のような表示があります。
これは3号から4号の太さの棒針で編むと、横が25~26目、縦が30~31段で、10cm×10cmとなるという目安を表しています。
ゲージの取り方
多くの本では「縦横15cm四方となるように編み、(軽くスチームアイロンで整えて目を揃え、定規を当てて)中心部分の10cm四方に何目何段あるかを数える」と紹介されています。
私も最初はこれでやりましたが、必ずしも目や段はきれいな一直線とはならず、正確に目数や段数が数えられなくてうまくゲージが取れませんでした(未だにこれはできません)。ですので、ここでは私が教わっている先生に教えていただいたゲージの取り方をご紹介させていただきます。
なおゲージを取る時は、1段目は「4. 作り目を作る」でご説明しましたように、まずは1段目で作り目を作ってから偶数段はウラ編みで、奇数段は表編みで編み進めていただき、最後は「伏せ止め」をして編んでいただければと思います。目安としては私が取った時と同じように横40目・縦50段としてみて下さい(少し12~13cmよりは大きくなりますが)。
ゲージを取るには、
① 概ね12~13cm四方程度になるように四角く編みます(10cm四方より少し大きめに編むのがポイントです)。
② 編み上がったものをアイロン台に乗せて周囲をまち針で止めて、スチームアイロンを押し付けないで少し浮かせた状態にしてスチームを当ててからしばらく冷まします。
③ ゲージが平たく落ち着いたら、縦と横の寸法を計ります。
④ 横は編んだ目数を横の寸法で割って、10を掛けます。
⑤ 縦は編んだ段数を縦の寸法で割って、10を掛けます。
スチームアイロンをかける時には、編んだものをあまり引っ張ったりせず、自然体で正方形(又は長方形)でまち針で止めるのが良いかと思います。
ここで特に重要なのは、「スチームアイロンを押し付けないで少し浮かせた状態にしてスチームを当ててからしばらく冷ます」事です。私が最初にやった時にはたくさんのまち針でゲージを止めるのが面倒だったのと、早く平たくしたかったのでアイロンを押し付けてアイロンがけしてしまいました。そのため目が潰れて大きくなってしまい、編み上がったくつ下は非常に窮屈なものとなってしまいました。くれぐれもゲージを平たくする際には時間と手間を惜しまず、「スチーム当て」をして下さい。でないと後で後悔する事になります。
ここからは私が自分で取ったコロポックルのゲージを例にご説明させていただきます。途中で針を4号から3号に変えている事もあり、私は2つのゲージを取っております。4号針で40目×50段で編んだものは、横14.6cm・縦14.5cmです。3号針で40目×50段で編んだものは、横13.5cm×縦13.8cmでした。それぞれのゲージは以下の通りです。
4号針
横(目数)=40目÷14.6cm=2.7397⇒ 2.7397×10=27.4
縦(段数)=50段÷14.5cm=3.4482⇒ 3.4482×10=34.5
3号針
横(目数)=40目÷13.5cm=2.9629⇒ 2.9629×10=29.6
縦(段数)=50段÷13.8cm=3.6231⇒ 3.6231×10=36.2
このゲージを分かりやすく記号的に表したものは、以下のようになります。
左側の記号を例に取ると、L字の真ん中の「4」は4号針で編んでいるという事を表します。そしてL字の下の「27.4」は「27.4目で10cmとなる」という事を表し、L字の左横の「34.5」は「34.5段で10cmとなる」という事を表します。私は1目の幅や1段の高さも気になるので、それぞれ寸法を目数や段数で割ったものもその下に書いておりますが、通常は必要ないようです。
正直なところ1目や1段の寸法がない事に最初は違和感があったのですが(どうしても1目・1段の寸法が気になってしまいます)、編み物をする時はまず全体のサイズを決め、その寸法とするのに何目・何段が必要か事を計算します。もちろんその寸法を目の幅や段の高さで割っても良いのですが、上記のゲージ表記の方が簡単に計算ができますので、慣れるとこれが便利である事が分かり、特にくつ下を編む時には両方を併記しております。
例えばこのゲージで23.5cmの幅を編みたいと思ったら、「23.5(cm)×27.4÷10=64.39」となり、64目又は66目編めば良いという事になります(編み目は偶数の方が何かと便利なので、64目か66目とします)。
高さ(長さ)を32cmとしたい場合には、「32(cm)×34.5÷10=110.4」となり、110段又は112段とします(段数も偶数が基本なので、110段か112段とします)。
もちろん編みたい幅や高さを目の幅や段の高さで割っても、全く同じ結果にはなります。私の場合は先生の説明を理解したり質問したりするため、先生から教わった方に慣れるようにしました。ここは教室等に通われずに編まれる方であれば、ご自分の好みでどちらでもお好きな方でゲージとしていただいて構わないと思います。
ゲージの難しさ
ここまでゲージの取り方をご説明させていただきましたが、正確にゲージを取るのは非常に困難です。人によって同じ糸・同じ針でも、ゲージは異なります。更には自分で取ったはずのゲージなのに、途中でそれまで編んだ幅や段の寸法を確認するとゲージ通りの寸法になっていないという事が多々あります。これは同じように編んでいるつもりでも、その時々によって編む力加減が変わってしまい、常に同じ力加減で編む事はできないためです。先生に「何か良い方法はないのでしょうか?」と伺っても、こればかりはどうしようもない事のようです。
大師匠(私の先生が教わった(ている)大先生を私は勝手にこう呼ばせていただいております)によると、例えばセーターを編む時には、まず脇下まで編んだらそこまでの長さ等を確認し、当初のゲージと異なる場合にはそこで改めてゲージを取り直して新しいゲージでその先を編むようにするとの事です。ちなみに私はセーターを編む時にいつも脇下のところで先生に見ていただくのですが、「問題なし」と判断された事はありません。
くつ下の場合にはセーターほど全体が大きくないのでゲージが正確ではなくてもセーターほど問題にはなりませんが、足長の部分は短すぎるとキツくなってしまいますし、長すぎるとユルユルでどちらも快適さが損なわれてしまいます。ですので、私は所々でそれまでの長さを確認し、短すぎればその先の段数を少し多めに、長すぎればその先の段数を少し少な目にして、全体として編みたい足長の寸法に合うように調整しております。ご参考まで。